大城崩:本文 田里朝直作
外間の子
是(くり)や大城(ううぐすぃく)若按司(わかあじ)ぬ輩(やかあ)外間(ふかま)ぬ子(しい)。ああ、島添(しますい)大里(おおざとぅ)ぬ按司(あじ)や、財欲(ざいゆく)に耽(ふ)きてぃ、銭金(じんかに)ぬ欲(ふ)しゃに、大城城(ううぐすぃくぐすぃく)軍(いくさ)押(う)し寄(ゆ)してぃ、七重八重(なないやい)攻(し)み囲(かく)でぃ居(うぅ)りば、水(みずぃ)や無(ね)ん城(ぐすぃく)六日(むいか)に成(な)りば、水(みずぃ)渇(かつぃ)に及(うゆ)でぃ大按司(ううあじ)や出(ぃん)ぢてぃ、討(う)ち死(じ)にゆ召(み)しょち女按司(うなじゃら)とぅ若按司(わかあじ)や、我(わ)が生(ぅん)まり島(しま)東(あがり)垣花(かちぬはな)に隠(かく)し置(う)ち有(あ)たん。極(ぐく)田舎(いなか)有(や)りば敵(てぃち)討(う)ちゅる働(はたら)ちや無(ね)らん、儀間(ぎま)とぅ湖城(くぐすぃく)や我(わ)が舅姑(すぃとぅ)島(しま)ゆ有(や)りば、那覇(なふぁ)近(ちか)き彼(あ)り此(く)りぬ頼(たゆ)い良(ゆ)たしゃ有(あ)てぃ、又(また)儀間(ぎま)湖城(くぐすぃく)んかい引(ふぃ)っ越(く)しゃい、仇(かたち)討(う)たんちゃい節(しつぃ)待(ま)ちゅる内(うち)に、鮫川(さみかあ)ぬ按司(あじ)ぬ軈(やが)てぃ大里(ううざとぅ)ぬ按司(あじ)、討(う)ち召(み)しぇん與呼(てぃやい)神(かみ)ぬ御硯・御託宣(みすぃずぃり)ぬ有(あ)りば、急(いす)ぢ思(う)み子(ぐぁ)御供(うとぅむ)勤(がらみ)ちゃい、鮫川(さみがあ)ぬ按司(あじ)とぅ打(う)ち連(つぃ)りてぃ、我(わ)が按司(あじ)ぬ仇(かたち)大里(ううざとぅ)ぬ按司(あじ)や討(う)ち取(とぅ)たん。女按司(うなぢゃら)と思(う)みん子(ぐぁ)や逃(に)ぢ走(ふぇえ)てぃ居(うぅ)らん、下(しむ)ぬ七間切(まぢり)野山(ぬやま)から手分(てぃわ)き、村々(むらむら)ゆ探(さが)しゅすぃが此(く)ぬ二月(たつぃち)成(な)る迄(ぎゃでぃ)ん、音連(うとぅづぃ)りん無(ね)らん。聞(ち)きば兄(すぃざ)思(う)み子(ぐぁ)乳母(ちいあん)や中城(なかぐすぃく)間切(まぢり)荻堂(おんぢょお)生(ぅん)まり、てぃやい有(あ)りば、急(いす)ぢ立(た)ち越(く)しゃい、搦(から)み出(だ)ち来(く)らに、やあやあ、供(とぅむ)ぬ達
(ちゃあ)、荻堂村(おんぢょおむら)来(ちゃ)ん。忍(しぬ)び隠(かく)りとぅてぃ尋(たずぃ)にやい見(ん)だに。
供
疑(うたげ)えや無(ね)らん荻堂(おんぢょお)大城(ううぐすぃく)、二村(たむら)ぬ内(うち)から探(さが)し出(ぃん)ぢゃ為侍(しゃ)びん。
歌
風車(かじまや)や凪(とぅ)りば 風(かじ)連(つぃ)りてぃ回(みぐ)る
吾(わん)や友(どぅし)尋(とぅ)めてぃ 遊(あすぃ)び欲(ぶ)しゃぬ
金松
よっよっよっ。
乳母
やあ、思(う)みん子(ぐぁ)。急(いす)ぢ入(い)り召(み)しょり。大道(うふみち)に出(ぃん)ぢてぃ今(なま)ぬ如(ぐとぅ)召(み)しょち、他所(ゆす)ぬ目(み)に掛(か)から時(とぅち)や如何(いちゃ)が召(み)しぇら。
外間の子
やあ、供(とぅむ)ぬ達(ちゃあ)、彼(あ)ぬ童(わらび)二人(たい)や肝(ちむ)不思議(ふしぢ)でむぬ、行(い)ち擦(ずぃ)りぬ如(ぐとぅ)出(ぃん)ぢてぃ道(みち)ぬ人(ちゅ)に、屋戸主(やどぅぬし)ぬ名字(みょおじ)尋(たずぃ)にやい来(ちょお)り。
供
拝(うぅが)ん留(とぅ)み有侍(やび)てぃ。
歌
勝連(かつぃりん)ぬ島(しま)や 通(かゆ)い欲(ぶ)しゃ有(あ)すぃが
和仁屋(わにゃ)真門(まじょ)ぬ潮(うしゅ)ぬ 蹴遣(きや)い倦(あぐ)でぃ
供
やあ、草切(くさち)りゆ。彼(あ)ぬ屋戸(やどぅ)ぬ主(ぬし)や如何(いちゃ)為(し)ちゃる人(ふぃとぅ)か。
草切
此(く)ぬ村(むら)ぬ頭取(かしらどぅ)い泊(とぅまい)ぬ輩(ひゃあ)屋戸(やどぅ)でえ侍(び)る。
供
又(また)此(く)ぬ頃(ぐる)、首里方(しゅいかた)ぬ人(ちゅ)ぬ宿(やどぅ)借(か)やい居(うぅ)んでぃ言(ぃゆ)すぃが、聞(ち)ち欲(ぶ)しゃ有(あ)むぬ語(かた)てぃ呉(くぃ)りゆ。
草切
屋戸(やどぅ)ん人(ちゅ)や女(うぃなぐ)童(わらび)三四人(さんゆにん)でえ侍(び)る。
供
士族(ゆかっちゅ)か百姓(ひゃくしょお)か。
草切
百姓(ひゃくしょお)や有(あ)や侍(び)らん士族(ゆかっちゅ)ぬ如(ぐとぅ)どぅ有(あ)や侍(び)いる。先(ま)ずぃ、通(とぅ)う有侍(やび)ら。
供
問(とぅ)い尋(たずぃ)にやい来(ちゃ)あ侍(び)たん。此(く)ぬ村(むら)ぬ頭取(かしらどぅ)い泊(とぅまい)ぬ輩(ひゃあ)屋戸(やどぅ)でえ侍(び)る。又(また)屋戸(やどぅ)ん人(ちゅ)や女(うぃなぐ)童(わらび)三四人(さんゆにん)、士族(ゆかっちゅ)どぅ有(や)るてぃやい、草切(くさち)りぬ言(い)や侍(び)たん。
外間の子
ああ、思(うむ)た事(くとぅ)叶(かな)てぃ、良(いぃ)い事(くとぅ)や聞(ち)ちゃん。大里(ううざとぅ)ぬ体(かんだ)忍(しぬ)でぃ隠(かく)りとぅすぃ疑(うたげ)えや無(ね)らん。とおとお、屋敷(やしち)取(とぅ)り囲(かく)でぃ、踏(ふ)み入(い)やい唯(ただ)に、込(く)ん締(し)みてぃ来居(ちょお)り。
供
うう。いや、逃(ぬが)さん。
虎千代
あいつあいつ。
供
いや、逃(ぬが)さん。
金松
あいつあいつ。
乳母
やあやあ、如何(いちゃ)る事(くとぅ)有(や)とぅてぃ今(なま)ぬ如(ぐとぅ)召(み)しぇが。
供
いや、推参(すぃいさん)な事(くとぅ)言(い)うな。急(いす)ぢ立(た)ち退(ぬ)きゆ。
おなぢゃら
あきよお、玉黄金(たまくがに)。
金松
やあ、母親(ふぁふぁうや)ゆ、明日(あちゃ)からや兄弟前(やちめ)とぅ二人(たい)。風車(かじまや)舞(め)え有侍(やび)らん。犬(いん)舞(め)え有侍(やび)らん。
殿地(とぅんち)から外(ふか)や庭(なあ)ん出(ぃん)ぢてぃ見(み)や侍(び)らん。何(ぬ)がすぃ済(すぃ)まらしゅる許(ゆる)ち給(たぼ)り。
乳母
あきよお、貴無(あてぃな)しぬ、其(う)ぬ科(とぅが)や有(あ)らん。やあ、思(う)みん子(ぐぁ)、敵(てぃち)に捕(とぅ)りらりてぃ如何(いちゃ)が成(な)い召(み)しぇら。
おなぢゃら
やあやあ、何(ぬ)ぬ由(ゆし)ぬ有(あ)とぅてぃ、今(なま)ぬ如(ぐとぅ)召(み)しぇが。罪科(つぃみとぅが)や無(ね)らん許(ゆる)ち給(たぼ)り。
外間の子
やあやあ、鮫川(さみがあ)ぬ按司(あじ)ぬ悪行(あくぎょ)知(し)らに、語(かた)てぃ聞(ち)かさ。先(ま)ずぃ、大城(ううぐすぃく)ぬ世(ゆ)ぬ按司(あじ)や大
慈悲(でえじふぃ)な者(むぬ)、世間(しきん)鳴響(とぅゆ)まりる福人(ふくじん)ゆ有(や)りば、城内(ぐすぃくうち)なかい山(やま)ゆりん積(つぃ)でぃ有(あ)たる宝(たから)、其(う)ぬ外(ふか)ぬ諸道具(しょどぐ)迄(までぃ)拾(ふぃ)ら取(とぅ)てぃ、軈(やが)てぃ石垣(いしがち)ぬ石(いし)ん手渡(てぃわた)しに持(む)ちゃい、大里(ううざとぅ)ぬ城(ぐすぃく)石垣(いしがち)ん清(ちゅ)らく積(つぃ)みゆ改(あらた)みてぃ、八尋殿(やふぃらどぅん)十尋殿(とぅふぃらどぅん)高二階(たかにけえ)ん造(つぃく)てぃ、高枕(たかまくら)据(すぃ)きてぃ近方(ちかかた)ぬ百姓(ひゃくしょお)ぬ、妻子(とぅじっくぁ)ぬ面(つぃら)ぬ清(ちゅ)らさすぃや呼(ゆ)び寄(ゆ)してぃ犯(うぅか)ち、又(また)百姓(ひゃくしょお)ぬ財物(ぜえぶつぃ)掠(かすぃ)み取(とぅ)てぃ、悪欲(あくゆく)ゆ尽(つぃく)ちゃりば世(ゆ)ぬ中(なか)ぬ障(さわ)い、生(い)かち置(う)ち済(すぃ)まん討(う)ち果(は)たち有(あ)ん。悪欲(あくゆく)ぬ蔓(かんだ)根葉(にふぁ)刈(か)やい捨(すぃ)てぃら與呼(てぃやい)、搦(から)み取(とぅ)てぃ行(い)ちゅん。やあ、供(とぅむ)ぬ達(ちゃあ)、急(いす)ぢ引(ふぃ)ち立(た)てぃり。
供
うう、いや、急(いす)ぢ立(た)てぃ。
おなぢゃら
やあやあ、生(な)し子(ぐぁ)振分(ふや)かりてぃ生(い)ちち居(うぅ)らりゆみ、吾(わぬ)ん諸共(むるとぅむ)に縛(しま)てぃ連(つぃ)りてぃ給(たぼ)り。
供
いや、要(い)らん事(くとぅ)言(い)うな。
虎千代
やあ、母親(ふぁふぁうや)ゆ何時(いつぃ)迄(までぃ)ん名残(なぐ)り、頼(たん)でぃ思(う)み切(ち)やい涙(なみだ)押(う)し拭(ぬぐ)てぃ内(うち)に入(い)り召(み)しょり。やあ、乳母(あんめえ)ゆ、敵(てぃち)ぬ手(てぃ)に掛(か)かてぃ、出(ぃん)ぢ立(た)ちゅる際(ちわ)に只(ただ)泣(な)ちん済(すぃ)まん、頼(たん)でぃ母親(ふぁふぁうや)や内(うち)に御遣(うんつぃけ)え為(すぃ)りゆ。
供両人
うう、急(いす)ぢ立(た)てぃ。
歌
あきよ神仏(かみふとぅき) 有(あ)る者(むぬ)ゆ有(や)らば
哀(あわ)り此(く)ぬ憂(う)ち目(み) 救(すく)てぃ給(たぼ)り
外間の子
やあやあ、思(う)みん子(ぐぁ)、大里(ううざとぅ)ぬ蔓(かんだ)搦(から)み出(ぢゃ)ち来(ちゃ)あ侍(び)たん。
若按司
やあ、輩(やかあ)、搦(から)み出(ぢゃ)ち来(ちゃ)あみ。
外間の子
うう、荻堂村(うぉんぢょおむら)なかい忍(しぬ)び隠(かく)りやい居(うぅ)すぃ、搦(から)み出(ぢゃ)ち来(ちゃ)あ侍(び)たん。
若按司
ああ、出来(でぃき)た出来(でぃき)た。やあ、輩(やかあ)、今日(ちゅう)や夜(ゆ)ん暮(く)りてぃ居(うぅ)むぬ、態(ゆう)格護(かくぐ)為(し)みてぃ置(う)ちゅてぃ、明日(あちゃ)や馬天浜(ばてぃんはま)出(ぃん)ぢゃち切(ち)り捨(すぃ)てぃてぃ来(く)うに。
外間の子
拝(うぅが)ん留(とぅ)み有侍(やび)てぃ。
歌
あきよ玉黄金(たまくがに)情(なさ)き無(ね)ん武士(ぶし)ぬ 百威(むむうどぅ)ち威(うどぅ)ち行(い)ちゅら與呼(ちゃい)とぅ思(み)ば 肝(ちむ)ん肝(ちむ)成(な)らん吾(わん)や此処(くま)居(うぅ)とぅてぃ 一人(ふぃちゅい)徒(いたずぃ)らに焦(く)がり死(し)なゆりか 無常(むじょ)ぬ世(ゆ)ぬ中(なか)や 稲妻(いなづぃま)ぬ光(ふぃちゃい)水(みずぃ)ぬ泡(あわ)心(ぐくる) 残(ぬく)る人(ふぃとぅ)無(ね)さみ 軈(やが)てぃ消(ち)い果(は)てぃる露(つぃゆ)ぬ身(み)ゆ有(や)りば 玉黄金(たまくがに)尋(とぅ)めてぃ一道(ちゅみち)成(な)ゆん。
おなぢゃら
大里(ううざとぅ)ぬ按司(あじ)ぬ女按司(うなじゃら)どぅ有(や)ゆる。玉黄金(たまくがに)二人(ふたい)、敵(てぃち)に捕(とぅ)りらりてぃ情(なさ)き無(ね)ん武士(ぶし)ぬ百威(むむうどぅ)ち威(うどぅ)ち、連(つぃ)り行(い)ぢゃらとぅ思(み)ば、肝(ちむ)ん肝(ちむ)成(な)らん、此処(くま)居(うぅ)とぅてぃ一人(ふぃちゅい)焦(く)がり死(し)なゆりか、玉黄金(たまくがに)追(うぃ)い付(つぃ)ちゃい一道(ちゅみち)成(な)ゆん。やあやあ、畑(はる)ん人(ちゅ)ゆ、玉黄金(たまくがに)ん子(ぐぁ)や此(く)ぬ道(みち)が行(い)ぢゃら。此(く)ぬ道(みち)や行(い)かに。何(ぬ)がすぃ玉黄金(たまくがに)行(い)く先(さち)ん知(し)らん。
歌
我謝(がじゃ)とぅ与那原(ゆなばる)ぬ浜(はま)に鳴(な)く千鳥(ちどぅい) 聞(ち)きば態(ゆく)勝(まさ)てぃ二人(たい)が面影(うむかぢ)ぬ 我(わ)が袖(すでぃ)に縋(すぃが)てぃ離(はな)ち離(はな)さらん 住(すぃ)み馴(な)りし城(ぐすぃく) 見(ん)だんちゃい為(すぃ)りば 夏雨(なちぐり)る涙(なみだ)掻(か)ち曇(くむ)てぃ見(ん)らん 急(いす)ぢ玉黄金(たまくがに)追(うぃ)い付(つぃ)かん為(すぃ)りば 歩(あゆ)まらん浜地(はまじ)後(あとぅ)に立(た)ち戻(むどぅ)る 目元(みむとぅ)暗々(くらぐら)とぅ成(な)るが心気(しんち)
乳母
やあ、女按司(うなぢゃら)ぬ前(めえ)ゆ。此処(くま)や馬天浜(ばてぃんはま)此処(くま)居(うぅ)てぃや済(すぃ)まん、とおとお、急(いす)ぢ御立(うた)ち召(み)しょおり。
おなぢゃら
肝(ちむ)苦(くり)てぃ行(い)ちゅん、暫(しば)し休(やすぃ)ま。
若按司
出様(でぃよお)来(ちゃ)る者(むぬ)や大城(ううぐすぃく)若按司(わかあじ)。按司添(あじすい)が仇(かたち)大里(ううざとぅ)ぬ生(な)し子(ぐぁ)、馬天浜(ばてぃんはま)出(ぃん)ぢゃち殺(くる)さしが行(い)ちゅん。
外間の子
馬天浜(ばてぃんはま)来(ちゃ)あ侍(び)たん。
若按司
やあ、輩(やかあ)、急(いす)ぢ切(ち)り捨(すぃ)てぃらすぃゆ。
外間の子
拝(うぅが)ん留(とぅ)み有侍(やび)てぃ。
おなぢゃら
やあやあ、其(う)ぬ童(わらび)二人(たい)や何(ぬ)ぬ由(ゆし)ぬ有(あ)とぅてぃ、如何(いちゃ)が召(み)しぇら。
外間の子
此(く)ぬ二人(たい)や大里(ううざとぅ)ぬ生(な)し子(ぐぁ)、大城(ううぐすぃく)若按司(わかあじ)ぬ敵仇(てぃちかたち)有(や)とぅてぃ、許(ゆる)ち置(う)ち成(な)らん。殺(くる)ち棄(すぃ)てぃらしゅん。
おなぢゃら
やあやあ、大里(ううざとぅ)ぬ按司(あじ)や如何(いちゃ)為(し)ちゃる科(とぅが)に殺(くる)さりてぃ居参(いめ)が。
外間の子
大城(ううぐすぃく)世(ゆ)ぬ按司(あじ)殺(くる)ち有(あ)る科(とぅが)に殺(くる)さりてぃ居参(いめ)ん。
おなぢゃら
人(ちゅ)殺(くる)ち有(あ)る報(むく)い又(また)殺(くる)さりてぃ居(うぅ)りば、何故(ぬゆ)でぃ罪(つぃみ)尽(つぃく)ち生(な)し子(ぐぁ)迄(までぃ)殺(くる)す。
外間の子
いや、推参(すぃいさん)な事(くとぅ)言(い)うな、急(いす)ぢ立(た)ち退(ぬ)き。
おなぢゃら
やあやあ、吾(わん)や大里(ううざとぅ)ぬ按司(あじ)ぬ女按司(うなじゃら)どぅ有(や)ゆる。我(わ)が按司(あじ)や殺(くる)ちゃりば、敵討(てぃちう)ちや済(すぃ)だん。何(ぬ)ぬ罪(つぃみ)ん無(ね)らん童(わらび)貴無(あてぃな)しに要(い)らん罪(つぃみ)掛(か)きてぃ、殺(くる)さしゆ召(み)しぇが慈悲(じふぃ)ゆ御情(うなさ)きに助(たすぃ)きやい給(たぼ)り。
外間の子
いやいや、極(きわ)またる事(くとぅ)ぬ凌(しぬ)ぢ凌(しぬ)がりみ。とおとお、急(いす)ぢ戻(むどぅ)てぃ行参(いも)り。
おなぢゃら
やあやあ、願(にが)てぃ自由(じゆ)成(な)らん事(くとぅ)ゆ又(また)有(や)らば、此(く)ぬ母(ふぁふぁ)ぬ苦(くり)しゃ哀(あわ)り知(し)り召(み)しょち、責(し)めてぃ兄子(すぃいざぐぁ)や許(ゆる)ち給(たぼ)り。
外間の子
やあ、思(う)みん子(ぐぁ)、女按司(うなじゃら)ぬ御願(うにげ)今(なま)ぬ如(ぐとぅ)有(や)りば、二人共(たいとぅむ)に殺(くる)しゅすぃや忍(しぬ)ばらん有(あ)や侍(び)むぬ、弟(うっとぅ)思(う)みん子(ぐぁ)今(なま)童(わらび)有(や)りば、母(ふぁふぁ)添(すぃ)いてぃ津堅島(つぃきんしま)に御流(うなが)しゆ召(み)しょち、片時(かたとぅち)ん急(いす)ぢ兄(すぃざ)思(う)み子(ぐぁ)殺(くる)しゃ侍(び)ら。
おなぢゃら
やあやあ、願(にげ)ぬ如(ぐとぅ)一人(ふぃちゅい)御助(うたすぃ)きぬ有(あ)らば、是非共(じふぃとぅむ)に兄子(すぃざぐぁ)や許(ゆる)ち給(たぼ)り。
外間の子
いやいや、殺(くる)しゅらば、迚(とぅてぃ)ん兄(すぃざ)思(う)み子(ぐぁ)殺(くる)ち、弟(うっとぅ)思(う)み子(ぐぁ)や先(ま)ずぃ残(ぬく)ち置(う)ちゃ侍(び)ら。
若按司
とおとお、言(ぃゆ)る事(ぐとぅ)に急(いす)ぢ兄(すぃざ)ん子(ぐぁ)ゆ殺(くる)す。
おなぢゃら
やあやあ、此(く)ぬ際(ちわ)ゆ有(や)りば何(ぬ)ぬ御恥(うは)じかしゃが。隠(かく)ち居(うぅ)てぃ済(すぃ)まん言(い)やな又(また)成(な)ゆみ。彼(あ)ぬ兄子(すぃいざぐぁ)虎千代(とぅらちゆ)や継子(ままっくぁ)どぅ有(や)ゆる、彼(あ)りが母親(ふぁふぁうや)や草(くさ)ぬ葉(ふぁ)ぬ露(つぃゆ)とぅ消(ち)い果(は)てぃてぃ、此(く)ぬ世(ゆ)ぬや居(うぅ)らん孤児(みなしぐぁ)どぅ有(や)ゆる。弟子(うっとぐぁ)金松(かにまつぃ)や直(じき)ん子(ぐぁ)どぅ有(や)ゆる、片親(かたうや)や残(ぬく)てぃ居(うぅ)りば弟子(うっとぅぐぁ)や殺(くる)ち、慈悲(じふぃ)ゆ、兄(すぃざ)ん子(ぐぁ)や生(い)かち給(たぼ)り。
若按司
云言葉(いくとぅば)ぬ色(いる)に義理情(ぢりなさ)き含(ふく)でぃ、聞(ち)ちゅる袖(すでぃ)迄(までぃ)ん、匂(にう)いぬ萎(しゅう)らしゃ。
外間の子
召(み)しぇる如(ぐとぅ)、聞(ち)ちゃる袖(すでぃ)迄(までぃ)ん露(つぃゆ)ぬ繁(しぢ)さ。
若按司
やあ、供(とぅむ)ぬ達(ちゃあ)、急(いす)ぢ虎千代金(とぅらちゆがに)解(とぅ)ち許(ゆる)すぃ。やあ、輩(やかあ)、女按司(うなじゃら)ぬ御志(うくくるざし)今(なま)ぬ如(ぐとぅ)有(や)りば、虎千代(とぅらちゆ)や許(ゆる)ち、金松(かにまつぃ)や殺(くる)すぃ。
虎千代
やあ、母親(ふぁふぁうや)ゆ、吾(わん)や年月(とぅしつぃち)ぬ頭(かしら)踏(くだみ)てぃどぅ、先(さち)や生(う)まりたる。弟(うっとぅ)先(さち)成(な)しゅみ、金松(かにまつぃ)や生(い)ちてぃ、吾(わん)殺(くる)ち給(たぼ)り。
おなぢゃら
やあ、虎千代(とぅらちゆ)、後先(あとぅさち)どぅ成(な)ゆる、吾(わぬ)ん後生(ぐしょ)行(い)かば、按司添(あじすい)とぅ母親(ふぁふぁうや)に面(うむてぃ)打(う)ち向(ん)かてぃ、云言葉(いくとぅば)ん無(ね)らん今(なま)ぬ如(ぐとぅ)でむぬ、頼(たん)でぃ玉黄金(たまくがに)義理(ぢり)ゆ聞(ち)ち留(とぅ)みり。やあ、金松(かにまつぃ)ゆ、継子(ままっくぁ)ゆでんすぃ吾(わん)や憎(にく)まにば、何故(ぬゆ)でぃ直(じき)ん子(ぐぁ)ゆ憎(にく)さちゃい思(うま)ん。義理(ぢり)ぬ重(うむ)さ有(あ)てぃ今(なま)ぬ如(ぐとぅ)有(や)りば、肝(ちむ)ぬ思(う)み染(す)みてぃ母(ふぁふぁ)うぅ恨(うら)みるな、真(まく)とぅ後生(ぐしょ)有(あ)らば過(すぃ)ぢし按司添(あじすい)とぅ、虎千代(とぅらちゆ)が母(ふぁふぁ)拝(うぅ)がでぃ細(みすぃ)く御宣(うんみゅ)きりゆ。
金松
やあ、母親(ふぁふぁうや)ゆ、此(く)ぬ事(くとぅ)や肝(ちむ)に思(う)み染(す)みてぃ居(うぅ)むぬ、後生(ぐしょ)行(い)かば今(なま)ぬ様(よお)御宣(うんみゅ)き有侍(やび)ら。
若按司
やあ、輩(やかあ)、彼(あ)ぬ二人(たい)とぅ吾(わん)や互(たげ)に敵仇(てぃちかたち)有(や)てぃん、女按司(うなじゃら)ぬ御志(うくくるざし)今(なま)ぬ如(ぐとぅ)有(や)りば、許(ゆる)ち置(う)ち有(あ)てぃん気遣(きづぃけ)えや無(ね)らん、とおとお、二人(たい)共(とぅむ)に許(ゆる)ち遣(やら)すぃ。
外間の子
拝(うぅが)ん留(とぅ)み有侍(やび)てぃ。やあ、女按司(うなじゃら)ぬ前(めえ)ゆ。御志(うくくるざし)若按司(わかあじ)や感(かん)じやい、二人(たち)共(とぅむ)に御助(うたすぃ)きゆ召(み)しぇん、とおとお、押(う)し連(つぃ)りてぃ御戻(うむどぅ)りゆ召(み)しょり。
おなぢゃら
やあ、若按司(わかあじ)ゆ、今日(ちゅう)ぬ御恩(ぐうん)尊(とぅうとぅ)さや長浜(ながはま)ぬ真砂(まさぐ)読(ゆ)みや尽(つぃく)すとぅん、云言葉(いくとぅば)に出(ぃん)ぢゃち言(い)ちや尽(つぃく)さらん。若按司(わかあじ)ぬ十百歳(とぅひゃくさ)ぬ願(にげ)や朝夕(あさゆ)胸内(んにうち)に願(にげ)てぃ居(うぅ)らに、やあ、生(な)し子(ぐぁ)、今日(ちゅう)からぬ先(さち)や敵仇(てぃちかたち)とぅ思(む)な、行(ゆ)く末(すぃ)寄(ゆ)しり遣(や)い御友(うとぅむ)為(すぃ)りゆ。
虎千代
此(く)ぬ御恩(ぐうん)尊(とぅうとぅ)さや何時(いつぃ)し忘(わし)りゆが、互(たげ)に行(ゆ)く末(すぃい)や御友(うとぅむ)為(すぃ)りゆ。
若按司
やあ、虎千代金(とぅらちゆがに)、やあ、金松金(かにまつぃがに)ゆ、互(たげ)に敵仇(てぃちかたち)とぅ思(む)な、友(どぅし)に為(すぃ)らに、とおとお、今日(ちゅう)や誇(ふく)らしゃぬ、押(う)し連(つぃ)りてぃ互(たげ)に踊(うどぅ)てぃ別(わか)ら。
虎千代
とおとお、押(う)し連(つぃ)りてぃ踊(うどぅ)てぃ別(わか)や侍(び)ら。
歌
今日(ちゅう)ぬ誇(ふく)らしゃや 木草(きくさ)色(いる)変(か)わてぃ
旱(ふぃでぃり)為(しゅ)る頃(くる)ぬ 雨(あみ)来合(ちゃ)た如(ぐとぅ)